こんにちは、みのりです。
人事のお仕事をする時に労働基準法をはじめとする労働法の知識が必要になってきますが、民法の知識も必要になってきます。

労働基準法は民法の特別法にあたるよ
特に労務トラブルが起きた時は民法の規定で判断されることが多いです。
ということで、今回は雇用の時に関連する民法の条文についてまとめてみました。
民法と労働基準法の関係

民法は人と人(法人含む)がトラブルになった時に調整するルールがまとめられた法律です。
その民法の中に債権に関わる編があり、雇用や使用者責任について書かれています。
ただ、雇用に関しては民法のルールだけでは労働者保護の観点で不十分であるということから、労働基準法をはじめとする労働関連法を民法の特別法として定められています。
押さえておきたい民法の条文
採用に関係するもの
民法 第623条(雇用)
雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。
民法上では口約束でも合意ができれば雇用関係が成立しますが、労働基準法で労働条件を明示するように規定されています。
退職に関係するもの
民法 第627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
2 期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
3 六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。
例えば、就業規則で退職の申出は1か月前と定めていても、2週間前に申出されたら民法のルールに則って対応することになります。
(ですので、会社としては引き継ぎがある等説明して早めに申し出てもらうことに協力してもらうスタンスを取ることになります。)
労働基準法では、解雇に関する規定のみで30日前に予告するルールになっています。
民法 第626条(期間の定めのある雇用の解除)
雇用の期間が五年を超え、又はその終期が不確定であるときは、当事者の一方は、五年を経過した後、いつでも契約の解除をすることができる。
2 前項の規定により契約の解除をしようとする者は、それが使用者であるときは三箇月前、労働者であるときは二週間前に、その予告をしなければならない。
期間の定めのある雇用の場合、5年を超えると無期転換に向けた手続きを進めていくことになりますが、雇止めをする場合は労働契約法のルールに則って対応していきます。
労務トラブル時に関係するもの
労務トラブルが生じた時、まずは労働関係法令の条文から適用できるものを探しますが、見つからない場合は民法のルールに沿って問題解決を図っていきます。
キーワードは「債務不履行」と「不法行為」
民法 第415条(債務不履行による損害賠償)
債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
2 前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
一 債務の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

債務不履行とは債権の義務を負う人がやるべき義務をしていないことをいうよ
民法 第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

不法行為とは、人が故意や過失によって他人の権利や利益を侵害して損害を与えてしまうことをいうよ
不法行為は、以下の4点が当てはまると成立します。
- 損害があったこと
- 違法性があること
- 因果関係があること
- 責任能力があること
また、不法行為の訴えをする時、同時に会社に対して使用者責任も問われることがあります。
民法 第715条(使用者等の責任)
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。
使用者責任では、善管注意義務違反として会社法第429条(役員等の第三者に対する損害賠償責任)の責任が問われることがあります。
消滅時効に関係するもの
民法 第724条(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。
民法 第724条の2(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。
消滅時効については、労務トラブルの損害賠償の請求だけでなく人事関係の書類の保管期限にも影響しています。
おわりに
民法の規定を知っておくと、労働関係法令の背景やトラブルが生じた場合に気をつけておかなければいけないことが分かりやすくなります。
民法は1050条と条文が多い法律ですが、雇用に関わる部分は一部なので意味を中心に理解を進めるといいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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