こんにちは、みのりです。
人を雇用する時、労働基準法と労働契約法は基本となる押さえておきたい法律です。
今回は、労働契約法についてまとめてみました。
労働契約法とは
労働契約法は労働契約に関する基本的なルールを定めた法律で、2008年(平成20年)3月に施行されました。

働き方が多様になり個別労働紛争が増えてきたため、基本ルールが法制化されたよ
労働契約法ができるまでは、個別労働紛争が起きた時には民法の規定や過去の判例を見て判断されていました。
しかし、過去の判例は多くの人にとって知られていない事が多いこと、争った時の結果の予測がしにくいこと(予測可能性)など不都合が出てきていたために、民事的なルールを明文化する動きに繋がりました。
労働契約法の目的は以下のとおり。
労働契約法 第1条
この法律は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。
条文は全部で21条。
狙いは、「合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われる」ことが促されることによって、個別労働関係紛争が防止されること。
その結果、「労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資する」というものです。
参考
厚生労働省:労働契約法のあらまし
厚生労働省:労働契約法について
労働契約の原則
労働契約法では労働契約に関する基本理念や共通する5つの原則を定めています。
労使対等の原則 | 労働契約は、労働者及び使用者が 対等の立場における合意に基づいて締結し、 又は変更すべきものとする |
均衡考慮の原則 | 労働契約は、労働者及び使用者が 就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、 又は変更すべきものとする |
仕事と生活の 調和への配慮の原則 | 労働契約は、労働者及び使用者が 仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、 又は変更すべきものとする |
信義誠実の原則 | 労働者及び使用者は、 労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、 権利を行使し、及び義務を利用しなければならない |
権利濫用の禁止の原則 | 労働者及び使用者は、 労働契約に基づく権利の行使に当たっては、 それを濫用することがあってはならない |

信義則や権利の濫用は民法にある規定を労働契約法にも明記したよ
労働契約内容の理解の促進
労働契約法 第4条
使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする。
2 労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。
労働者の「働きます」、使用者の「雇用します」という労働契約自体は合意があれば成立しますが、労働条件の内容について認識がズレていると労務トラブルに繋がります。
これを防止するためにできるだけ書面で明示して理解を深めるように規定されています。
なお、労働基準法で書面に明示する内容が規定されているので、要注意です。
安全衛生の配慮
労働契約法 第5条
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
労働契約に際して、使用者には安全配慮義務が付随して発生することが規定されています。

安全配慮には、身体だけでなく心の健康も含まれるよ
労働契約の成立および変更

合意 がポイントになるよ
労働契約を成立させるとき、変更したいときは、労働者と使用者で合意があれば成立します。
就業規則との関係
合理的な労働条件が定められている就業規則を従業員に周知していれば、労働契約の内容は就業規則に定めている労働条件とされます。

就業規則に定めた基準に達しない労働契約は無効になるよ
(無効の部分は就業規則で定めた基準になるよ)
就業規則の内容と違う労働条件を設定したい場合は、就業規則で定めている労働条件に達している限り、使用者と労働者で合意を得られれば有効となります。
就業規則の変更に伴う不利益変更
労働契約の不利益変更は原則として認められていませんが、就業規則の不利益変更が以下の事情等に照らして合理的なものであり、変更後の就業規則が周知されていれば、認められます
- 労働者の受ける不利益の程度
- 労働条件の変更の必要性
- 変更後の就業規則の内容の相当性
- 労働組合等との交渉の状況

就業規則は従業員代表等の意見を聞けば改定できるからだよ
手続き上は不利益変更が可能ですが、原則に労働契約の内容について理解を促進するとあるので、実務上はより丁寧な説明や意見への配慮が必要になってきます。
労働契約の継続及び終了
条文では出向(第14条)、懲戒(第15条)、解雇(第16条)しかないですが、判例では労働契約の展開として配転、降格・減給、休職もカバーされています。

合理的な理由 と 社会通念上相当 がポイントになるよ
出向
労働契約法 第14条
使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。
出向は、労働者の労務の提供先が変わるので労働条件が大きく変わります。
そのため、使用者が権利を濫用しないように出向に関する規定を設けています。
懲戒
労働契約法 第15条
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。
懲戒は、企業秩序を維持し、円滑な運営を図るために行われるもので、就業規則の規定に基づいて判断していきます。
案件ごとに会社への損害の程度や故意・過失などを判断していきますが、懲戒も使用者が権利を濫用したとしてトラブルのもとになりやすいので、ルール化されています。
解雇
労働契約法 第16条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
解雇はもっとも労務トラブルが起きやすいものです。
もともと最高裁判例の「解雇権濫用の法理」がルールとして明文化されました。
期間の定めのある労働契約

期間の定めのある労働契約とは
雇用契約で雇用期間を決めて雇用することだよ
総務省「労働力調査」によると、非正規社員の割合は40%近くを占めています。
非正規社員の多くは期間を限定した有期労働契約を締結しており、契約終了の場面で労務トラブルが起こりやすくなっています。
労働契約法では、有期労働契約の更新や復更新の下で生じる雇止め、無期労働契約への転換についてルールを定め、有期労働契約の適性な利用を促しています。
契約期間中の解雇等
労働契約法 第17条
使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
2 使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。
民法第628条に「当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる」ことが規定されていますが、有期契約労働者の実態は雇用保障の期待があることから、「やむを得ない事由があるとき」に該当しない場合は解雇することができないことを明らかにされました。
無期労働契約への転換
有期契約は1度の契約で終了することもあれば、更新することもあります。
労働契約法では、反復更新した場合に期間の定めのない契約(無期労働契約)へ転換するようなルールを設けました。


5年を超えた労働契約の時に、労働者から申し込むことで無期契約に転換するよ
労働者から申し込みがあった時には、使用者は申し込みを承諾したものとみなされます。
なお、労働契約を満了した人を改めて雇用する場合、原則として6か月以上の期間が空いていると5年ルールは一旦クリアされ、新たな雇用をした時から通算のカウントが始まります。
有期労働契約の更新等
労働契約法 第19条
有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。
最高裁判所判決で確立している「雇止めに関する判例法理」(いわゆる雇止め法理)をルール化し、客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は雇止めを認めないと明記されました。
おわりに
労働契約法は条文の数も多くないし、シンプルですが、日常業務にあてはめていくと奥が深いなぁと実感します。
判例もたくさんあるので、セットで勉強して理解を深めていかないといけないですね。
自戒をこめて。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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