出向に関連する判例を知っておこう

05_労務・就業管理

こんにちは、みのりです。

先日、出向に関する記事を書いたので、今回は出向の時に知っておきたい判例をまとめてみました。
※判例は出向以外の内容もありますが、ここでは出向に関する内容に絞って書いています。

出向に関わる判例

新日本製鐵事件 (H15.04.18最二小判)

自社で行っていた業務を協力会社に委託することに伴い、同意を得られていない従業員についても出向命令することが有効か(権利の濫用か)、を争った事案。

会社は、以下の対応を行っていました。

  • 労働協約や就業規則に社外勤務規定を明記していた
  • 出向にあたり、組合の同意を得ていた
  • 人選は具体的な基準のもとに行われた
  • 従業員に対して、出向先の労働条件を提示して話し合いを行った

判決は
上告棄却(原告の請求棄却)
となりました。

判決のポイントは、

  • 就業規則に社外勤務規定が明記されており、労働協約にも詳細な規定が書かれていたこと
  • 業務委託の経営判断や出向の人選に合理性があること
  • 出向後の労働条件等に不利益が生じないこと
  • 手続きに不相当な点があるともいえないこと

これらを理由として、権利の濫用にあたらないと判断されました。

参考
全国労働基準関係団体連合会:出向命令無効確認請求上告事件

リコー出向事件(H25.11.12東京地判)

退職勧奨を拒否した従業員に対して子会社への出向を命じるのは有効か(権利の濫用か)、を争った事案

本件は、人員削減施策に伴う退職勧奨で退職の同意をしなかった技術職の従業員を子会社に出向させ、商品の梱包,検品,ラベル貼りと全く違う業務に従事させたことから、出向命令は人事権の濫用として労働審判を経て裁判に発展していきました。

判決は、

人事権の濫用にあたる

として無効とされました

判決のポイントは、

  • 業務上の必要性及び人選の合理性を欠いていること
  • 労働組合もなく、従業員への説明もなかったこと
  • 技術職から物流における梱包業務といった著しい業務の変更があったこと
    (出向に際し、降格、降給はなし)

なお、リコーには労働組合はなかったので、原告は東京管理職ユニオンに相談し、団体交渉が行われました。

参考
全国労働基準関係団体連合会:

古河電気工業事件(S60.4.5最二小判 )

営業譲渡の実態がある業務に従事するために出向させていた従業員について、本人の同意をとらずに復帰命令をしたことは有効か(権利の濫用か)、を争った事案

会社は、以下の対応を行っていました。

  • 復帰もありうることや労働条件を労働組合と協議していた
  • 出向に関して本人同意を得ていた

判決は
上告棄却(原告の請求棄却)
となりました。

本件は、出向後3か月で勤怠不良があったため、原告を出向元に復帰させて従前の業務に従事させるための復帰発令でした。

判決のポイントは、

  • 労働者が出向元の指揮命令の下に労務を提供するということは、もともと出向元との当初の雇用契約において合意されていた事柄であること

例えば「出向元に復帰はない」という約束がない限り、本人の同意なく出向復帰の命令はできるという考え方が示されました。

参考
全国労働基準関係団体連合会: 古河電気工業事件

権利の濫用と見られないために気をつけるポイント

リコー出向事件で出向命令が権利濫用にあたる場合の判断について、以下の基準が示されました。

  • 業務上の必要性
  • 人選の合理性
    (対象人数、人選基準、人選目的等の合理性)
  • 出向者である労働者に与える職業上又は生活上の不利益
  • 出向命令に至る動機・目的 等

出向の本来の目的は、キャリアの経験を積む、企業グループ内で人事交流を行うというものですが、事業を他社に移管する際に併せて行われることもあります。

後者の場合は、退職勧奨と受け止められないように上記の基準をしっかり押さえて出向条件を整理していくことが肝要です。

労働契約法第14条(出向)も意識しておこう

労働契約法第14条(出向)

使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。

労働契約法ができてからは、労働条件が大幅に低下する場合や著しい不利益が生じる場合にこれを根拠に判断されることになりました。

おわりに

判例を見ていると、(裁判ということもありますが)諸規程に明記しておくことや、組合や出向となる対象者への説明などの手続き面を怠らないことがとても大事だなと改めて思います。

争いになった場合、事前に説明をしていたかどうかは結果を左右するので、必ず説明もしておきたいですし、説明時の内容や質問を受けたことなどを記録に残しておくようにしておくことをオススメします。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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