こんにちは、みのりです。
職場におけるハラスメントへの対応として、相談窓口の設置は事業主の責務として求められています。
一方で、相談窓口になった方はきちんと対応できるか不安を抱えていることも。
今回は相談を受ける立場の方向けにハラスメント相談の進め方を書いてみたいと思います。
相談対応の流れについて
相談を受けた場合、大まかに以下の流れとなります。

相談受付

ハラスメントの相談をしたいんです…
最初のコンタクトは、メール、電話が中心になります。
電話がかかってきた場合は、個室や離れた場所(メモをとるので机等がある場所)に移り、第三者に聴かれないよう配慮します。
ここで対応するのは、
相談してくれてありがとうという気持ちを伝えた上で
- 相談の主訴や概要を把握する
- 相談者の心身の状態を把握する
- 本人ヒアリングの日程を決める
ということ。
主訴というのは、相談者がどうしたいと思っているのか?を理解することです。
話をすることで、相談者ご自身の考えが整理ができて「また困った時に連絡する」と終わることもあります。
一方で、行為者と離れたい、何かしらの処分をしてほしい、という要望がある時もあります。
その場合は匿名で相談を受け続けるのは難しくなるので、「相談したことで不利益は生じさせない」と伝えた上で名前を聞かせてもらえないか伺います。(無理強いはしない)
相談内容については、特に、いつ頃、誰との間で、何があったのかについて大まかに確認します。

ここでは話を聞くだけ
相談者の気持ちに寄り添うけれど、判断はしないよ
一方の話しか聴いていない状態で、もし、「これはハラスメントですね」と決め付けてしまうと、かえって職場を混乱させるもとになりかねません。
ただし、内容を聴いているとハラスメントが酷くメンタル不調をきたしかねないケースやストーカーのようなケースがあります。
そのような緊急事態の場合は、相談者の心身の状態を確認した上で、本人ヒアリングをする前に距離をおく手立てを取りたいと相談者に提案します。

応急処置をとる時も、会社の動き方を相談者に伝えてからが良いです。
何よりも大事なのは、相談者の心身の安全
会社が良かれと思ってやることも、相談者の心理的な負担になる場合もありますので、進め方を確認しながら対応していきます。
最終的には本人ヒアリングをする日程を決めて、その日の対応はクローズにします。

本人ヒアリングまでに時系列にメモをまとめてきてもらうのもオススメです
本人ヒアリング
本人ヒアリングでは、相談内容について具体的に確認していきます。
- 行為者の言動について
(いつ、どこで、どのような言動があったか) - 第三者は知っているか
または第三者に相談しているか - 相談の主訴に変更はないか
- 行為者や第三者にヒアリングをしても良いか
- 解決を進めていくにあたりどこまで開示してよいか
(例:行為者の上司、部長など)
場所は相談の守秘義務が守れるところを選びます。
職場から離れた会議室や社外の静かに話ができる場所、またオンライン面談なども良いと思います。

ヒアリングの冒頭で守秘義務を守ることと相談で不利益が生じないことは必ず伝えるよ
ハラスメントは非常にセンシティブな話になるので、メモをとる時も先に相談者に許可を得てからやります。
これらは少々かたく感じるかもしれませんが、相談者が安心して話してもらうためにも必要なプロセスになります。
安心して話してもらうためには、もう一つ。

進め方を相談者に話して、納得してもらうこと
相談者は相談したことで不利益が生じるのではないかと不安を抱えています。
ですので、受けた相談に対して会社がどう対処していくか相談者に伝えて、不安を解消しながら進めていくことが重要になってきます。
行為者ヒアリング
行為者ヒアリングは、相談者から聞いた話をもとに、その事実があったか確認していきます。
- 相談者から聞いた言動の事実を確認する
- 事実があった場合
その言動に至った理由を確認する - 本人の言い分を聴く
- 相談者に報復をしないように念押しする
報復した場合は懲戒行為にあたることも伝える

二次ハラスメントに繋がらないように細心の注意を!
行為者にしてみれば「ハラスメントの言動があったのか」を見られる側なので、感情は穏やかではありません。
ですので、相談窓口担当者は客観的な事実確認をするとともに本人の言い分もちゃんと聴きます。
「自分はそう思ってないんですけどね」というようなその場しのぎの迎合するような発言は禁物です。
特に行為者が高い役職だったり、組織の中で成果を出す人の場合、起こりうるので要注意です。

うーん、
相談者と行為者の言い分が食い違う
ヒアリングをしていると事実がかみ合わないことがあります。
その時は、再度、本人ヒアリングをして確認します。
2~3回ほど相談者と行為者にヒアリングしても事実がかみ合わない時は「かみ合わない」というヒアリング結果とします。

むりやり事実を合わせる必要はないです。
第三者ヒアリング
第三者ヒアリングは、相談者と行為者の事実がかみ合わない時に実施することがあります。
ヒアリング者の安全と守秘義務は守ることを伝えた上で、
- かみ合わない事実に対して
どのような事実があったのか確認する - その言動を見ていた場合
どのように感じたか確認する - 相談について口外しないよう協力してもらう

第三者の安全と二次ハラスメント防止を気をつけるよ
二次ハラスメントは相談したことで報復を受けたり、噂が広まって職場にいづらくなってしまうことを言います。
第三者にヒアリングした場合も、二次ハラスメントを起こさず、相談者の安全が守られるよう協力してもらいます。
対応の検討・実施
ヒアリングが済んだら、実際の対応・処分を検討します。
双方に誤解があった場合は人事が間に入って誤解を解くなど和解を試みます。
そうでない場合は、注意(懲戒でないもの)は懲戒、人事異動などの対応をとります。

懲戒を考える時は
- 行為の内容、頻度、期間、常習性
- 行為による被害の程度
- 行為者が反省しているか
などをみて、就業規則の懲戒規定と社外の同様事例の処分例・判例を照らし合わせながら処分を決めていくよ
特に社外で起きたハラスメントの同様事例は確認しておいた方がいいです。
社内の処分が重すぎる場合は、労働契約法第15条により処分無効となる場合があります。
一方で処分が軽すぎる場合は、より深刻な労務トラブルや退職などの人材流出につながる可能性があります。

実行する前に相談者にヒアリングの結果や対応について説明するよ
相談者は相談したことで不安を感じているので、「あとは会社にお任せ」にせず、最終的な判断を説明し、相談をクローズさせます。
本人へのフォロー、行為者へのフォロー
ハラスメント相談は処分して終わりとはなりません。
二次ハラスメントを起きていないか注意を払い、時には相談者や行為者と面談を実施し、通常業務に戻れているかフォローしていきます。
再発防止の検討・実行
ハラスメントは根底には職場風土の問題が潜んでいることもあります。
また、社内で同様に事例を起きないように防止もしなくてはいけません。
再発防止策として、
- トップからメッセージを発信する
- 全社的にハラスメント防止研修を実施する
- 管理職向けにマネジメント研修を実施する
- ケーススタディとして職場懇談会などで再発防止について話し合う
(事例は多少アレンジして相談者のプライバシーを守る) - 社内アンケートやサーベイを実施する
- 専門家を呼んで講演会などを開催する
などが考えられます。

教育のアンケートを活用すると意見が出てきやすくなるよ
また、相談解決直後では「犯人探し」になる場合もあるので、人権やダイバーシティ関係の行事に合わせるとポジティブな雰囲気で開催しやすくなります。
おわりに
自分も相談窓口の担当になった当初は、何をどう話を聞けばいいのか分かりませんでした。
人事に相談にあがってくる頃には簡単に和解できない事が多いので、できるだけ双方の言い分を聞いて極力こじらせないというところが踏ん張りどころでした。
相談内容にはハラスメントを超えて事件性のあるものもあります。
行為者が社内の上級の管理職だったり、取引先の人など相談者だけで解決できないケースもあります。
相談者の安全を最優先にしながらも、案件によっては体制を整えながら対応していくとよいでしょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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