人事として押さえておきたいパワハラ対応について

05_労務・就業管理

こんにちは、みのりです。

突然ですが、職場のハラスメント対策はできていますか?
人間関係という個人間の問題で済ませていませんか?

2020年6月1日に改正労働施策総合推進法(以下、パワハラ防止法)が施行となり、会社に対してパワーハラスメント(以下、パワハラ)防止の対策が義務づけられています。
中小企業については、今は努力義務ですが、2022年4月から義務化となります。

今回はパワハラ対応について基本的なことをまとめてみました。

パワハラとは?

日本で最初にパワハラという言葉が使われたのは2001年。
ハラスメント関連のコンサルタント会社 クオレシーキューブ代表(現会長)の岡田康子さんによって使われたのが始まりです。

以降、民間や行政によって定義づけられてきました。

2003年職権などのパワーを背景にして、
本来業務の適正な範囲を超えて
継続的に人格や尊厳を侵害する言動を行い、 
就労者の働く環境を悪化させる、
あるいは雇用不安を与えるもの
クオレシーキューブ
代表(現会長)
岡田康子さん
2009年職場において、
地位や人間関係で弱い立場の相手に対して、
繰り返し
精神的又は身体的苦痛を与えることにより、
結果として働く人たちの権利を侵害し、
職場環境を悪化させる行為
職場のハラスメント 
研究所 所長
金子正臣さん
2012年同じ職場で働く者に対して、
職務上の地位や人間関係などの
職場内の優位性(※)を背景に、
業務の適正な範囲を超えて
精神的・身体的苦痛を与える
または職場環境を悪化させる行為をいう。
※上司から部下に行われるものだけでなく、
 先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から
 上司に対して様々な優位性を背景に行われる
 ものも含まれる
 
厚生労働省
職場のいじめ・
嫌がらせ問題に
関する円卓会議・
ワーキンググループ 
2019年職場において行われる
優越的な関係を背景とした言動であって
業務上必要かつ
相当な範囲を超えたもの
により
その雇用する労働者の就業環境が害されること 
労働施策総合推進法 
第30条の2
(パワハラ防止法)
※2019年6月5日公布
 2020年6月1日施行

ここでいう「職場」とは「事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所」をいいます。

本拠地とする職場でなくても、仕事をする場所であれば職場に該当するよ

そして、「労働者」は社員に限らず、契約社員やパート・アルバイトなど直接雇用する人も対象になります。

業務委託、インターンシップ生は労働者の範囲に含まれていません

定義上、業務委託、インターンシップ生は労働者の範囲に含まれていませんが、誰もが安心して働ける職場づくりは仕事の成果に直結してきますので、業務委託、インターンシップ生まで含んだ対応をしていく方がいいでしょう。

この3要素が揃えばパワハラが成立

パワハラ防止法では以下の要素がすべて該当する場合にパワハラが成立するとしています。

要素①
優越的な関係を 
背景とした言動
当該事業主の業務を遂行するに当たって
当該言動を受ける労働者が行為者に対して
抵抗又は拒絶することができない
蓋然性が高い関係を背景として行われるもの
要素②
業務上必要かつ 
相当な範囲を
超えた言動
社会通念に照らし、
当該言動が明らかに
当該事業主の業務上必要性がない
又はその態様が相当でないもの
要素③
労働者の
就業環境が
害される
当該言動により
労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、
労働者の就業環境が不快なものとなったため、
能力の発揮に重大な悪影響が生じる
当該労働者が就業する上で
看過できない程度の支障が生じること

要素③の判断に当たっては、同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障を生じたと感じるような言動であるかどうかを基準とすることが適当と言われています。

当事者や相談対応者の感じ方ではなく「平均的な労働者の感じ方」となるので要注意!

これは行為者が「大したことない」と思っていてもパワハラに該当すると判断される場合もあるし、受け手側が「自分はパワハラを受けた」と訴えても平均的な労働者からするとパワハラとは言い切れないと判断されるということもあります。

セクハラは「受け手側が不快と感じたらセクハラに該当する」となりますが、パワハラは個別の状況で判断していくので対応の難しさがあります。

パワハラ6類型と該当する例、しない例

職場におけるパワーハラスメントについては、言動によって次の6つのタイプに分かれるとされています。

代表的な
言動の類型
該当すると
考えられる例
該当しないと
考えられる例
身体的な攻撃暴行、傷害
・殴る、蹴る
・ものを投げつける 等
・誤ってぶつかる
精神的な攻撃脅迫、名誉棄損、侮辱、
ひどい暴言
・人格の否定
・相手の性的志向・性自認に
 関する侮辱的な言動
・長時間にわたる厳しい叱責
・大勢の前での威圧的な叱責
・相手の能力を否定し、罵倒
 するようなメールを複数の
 人も宛先に入れて送る 等
・社会的ルールを欠いた
 言動を再三注意しても
 改善されない労働者に
 一定程度強く注意すえう
・重大な問題行動を行った
 労働者に対して、一定
 程度強く注意する 等
人間関係からの
切り離し
隔離、仲間外し、無視
・仕事外し
・別室への隔離
・自宅研修
・集団無視による孤立 等
・新入社員への教育として
 短期集中的に別室で
 研修を実施する
・懲戒した労働者の職場
 復帰のために一時的に
 別室で研修する
過大な要求

業務上明らかに不要なことや
遂行不可能なことの強制、
仕事の妨害
・長期間、勤務に直接関係
 ない作業をやらせる
・新卒に教育せずに
 過大なノルマを課す
・私的な雑用を強制する 等

・育成のために少し高い
 レベルの仕事を任せる
・繁忙期に業務上の必要
 性から通常よりも多い
 業務を任せる
過小な要求

業務上の合理性なく能力や
経験とかけ離れた程度の
低い仕事を命じることや
仕事を与えないこと
・役職に求められるレベル
 より低い仕事を与える 等

・労働者の能力に応じて
 一定程度業務内容や
 業務量を軽減する
個の侵害私的なことに過度に
立ち入ること
・職場以外でも監視
・本人の機微情報を承諾なく
 他の労働者に暴露する 等
・配慮を目的に家族の
 状況などを尋ねる
・本人に承諾を得た上で
 機微情報を関係者へ
 伝え、配慮を促す

この6類型は2012年の円卓会議の時に分類されましたが、パワハラ防止法施行に伴い「該当しない例」がつきました。

該当しない例はあくまでも例なので、これをやらなければ大丈夫ということはないよ

パワハラ防止法違反となったらどうなる?

パワハラ防止法には罰則はなく、厚生労働大臣による助言・指導および勧告になります。
勧告に従わない場合は、企業名公表されることがあります。

パワハラ防止法では助言・指導・勧告だけど、パワハラによるメンタル不調となった場合、労働安全衛生法上の安全配慮義務違反として労災と認められる場合があるよ

会社に求められる3つの対応

ハラスメント対応については、厚生労働省が運営しているハラスメント対策の総合情報サイト「あかるい職場応援団」に資料が掲載されています。

会社が対応することは、おもに次の3点です。

  • 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
  • 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  • 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

  1. 職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること
  2. 行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、労働者に周知・啓発すること

「方針の明確化」については、社長のメッセージ発信や「ハラスメント防止方針」など公式な文書など対応方法はさまざまです。
企業規模が大きくなっていき、IPO等をかんがえるようになったらコンプライアンス強化の観点から公式な文書にした方がいいでしょう。

就業規則については「パワーハラスメント」の単語を盛り込んでいきます。
「他の人権を侵害した者」では、会社のパワハラに対する姿勢がやや弱いと受け止められてしまいます。

厚生労働省の「モデル就業規則」第12条にパワハラに関する規定が書いてあるので参考にしてみるといいよ

周知については、職場への掲示やイントラネットへの掲載など、従業員誰もが見られる状態にしておきます。

また、心理的・身体的に安全な職場を作っていくためにも、教育や説明会などを実施して理解を深めていくことも大事です。

相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

  1. 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
  2. 相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること

相談窓口については、雇用機会均等法で設置義務のある「均等取扱い相談窓口(セクハラ相談窓口)」が設置されていれば、パワハラに関する相談も受け付けるよう機能を拡充すると良いでしょう。

新たに相談窓口を作る場合は、担当者を誰にするかだけでなく、相談があった場合に流れが止まらないようにエスカレーションルールも決めておきます。

相談受付用のダミーアドレスを用意しておくのも便利ですよ 

職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

  1. 事実関係を迅速かつ正確に確認すること
  2. 速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
  3. 事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと
  4. 再発防止に向けた措置を講ずること

相談の基本ステップは、相談者ヒアリング→行為者ヒアリング→第三者ヒアリング
事実を正確に把握しなくてはいけないのですが、メンタル不調を起こす寸前の相談者もいます。
相談者の体調が著しく悪い場合は、休ませるなどして心身の安全確保を優先します。

相談者は相談したことでより一層つらい思いをするのではないかと不安を感じています。
相談者の希望を確認しながら、「こう対応を進めていきます」と承諾を得ておきましょう
特に、相談した事実を誰まで共有するかは大事。

ヒアリングした人が勝手に判断して動くと事態がこじれて二次ハラスメントが起きかねないので要注意だよ

おわりに

パワハラは、行為者と受け手だけの問題ではなく、それを周りで見たり、聞いたりする人も嫌な思いをしてしまい、職場全体の生産性を落としてしまいます。
場合によっては、退職も発生し、人が定着しない職場になってしまうことも。

法改正施行から1年。
パワハラ防止の体制ができているか、機能しているか再点検してみるといいでしょう。
また、中小事業主の義務化は2022年となりますので、今のうちから体制を整えていくことをおすすめします。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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