障害者雇用促進法について(従業員数43.5人から雇用義務あり)

08_ダイバーシティ

こんにちは、みのりです。

6月が近づいてくると、ハローワークに障害者雇用状況報告書を出しにいく季節が来たか…と思います。
障がい者の雇用は会社に義務づけられているものの、法律の内容や雇用のしかたなど分からないことが多いかもしれません。

ということで、今回は障がい者雇用に関する法律の内容についてまとめてみました。
※このブログでは「障がい者」としていますが、法律や名称などの固有名詞については「障害者」と表記することがあります。

障害者雇用促進法のポイント

会社が障がい者を雇用する時に関係してくる法律は、「障害者の雇用の促進等に関する法律」(以下、障害者雇用促進法)という法律です。

どんな目的でできた法律なのかというと、

この法律は、障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等のための措置、雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会及び待遇の確保並びに障害者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするための措置、職業リハビリテーションの措置その他障害者がその能力に適合する職業に就くこと等を通じてその職業生活において自立することを促進するための措置を総合的に講じ、もつて障害者の職業の安定を図ることを目的とする。

障害者雇用促進法 第1条 より

ということです。

ポイントは、

  • 法定雇用率の達成
  • 差別の禁止と合理的配慮の提供

の2つだよ

もともとは、傷痍軍人(戦争で負傷し身体に障がいをおった人)の雇用確保を目的としてできた「身体障害者雇用促進法(1960年)」が前身で、この時に法定雇用率が設定されました。
その後、身体障碍者雇用促進法は障害者雇用促進法として発展的に解消され、知的障がいや精神障がいも対象として拡大してきました。

障がい者の範囲は?

身体障がい者、知的障がい者、精神障がい者って具体的にはどんな人たちなの?

障害者雇用促進法では、障がい者の範囲が決められています。

別表は 障害者雇用促進法(e-gov) を参照


法律全体が対象とする障がい者の範囲は広いのですが、法定雇用率の義務については以下の手帳を所持している人を範囲としています。

身体障がい者身体障害者手帳重度:1、2級
重度以外:3~6級
※7級が2つ以上の障がいが重複すれば6級に該当
知的障がい者療育手帳
愛の手帳(東京、横浜)
愛護手帳(青森、名古屋)
みどりの手帳(埼玉)
重度:A判定、1度、2度
重度以外:B判定、D判定、3度、4度
※手帳の種類によって判定の記号が変わる
※手帳の判定は重度以外だけど、
 職場適応訓練の結果、重度判定を受けることがある
精神障がい者
発達障がい者
精神障害者保健福祉手帳1~3級
※等級による重度区分なし

「重度」の人を1人雇用すると2人分としてカウントしてよいというルールになっているので、この「重度」と「重度以外」の分け方は実務上、重要なポイントになってきます。

障がい内容は個人情報の中でも要配慮個人情報に該当するので取扱い注意だよ

ポイント①:法定雇用率の達成

法定雇用率とは、障害者雇用促進法で「会社は障がい者を従業員の何%以上雇用しましょう」と定めている雇用率のことです。

現在の法定雇用率は以下のとおり(2021年3月1日改定)

民間企業2.3%
国、地方公共団体等2.6%
都道府県等の教育委員会2.5%

43.5人以上雇用している民間企業は法律の対象になるよ

実雇用率の計算方法

法定雇用率に対して、実際に会社で雇用している障がい者の雇用比率のことを「実雇用率」といいます。

実雇用率の計算方法は以下のとおり。
障がいの等級や勤務時間の長さによってカウントが変わってくるので、不慣れな時は間違いやすいところです。

例えば、従業員数が200人(常時雇用者が100人、短時間雇用者が100人)の企業で、障がい者を4人(すべて常時雇用の重度以外)としたら、実雇用率は4÷(100+100×0.5)=2.67%で法定雇用率の2.3%を達成していることになります。

実務上、実雇用率を出す時は小数点第2位まで出しています

法定雇用率が未達成の時はどうなる?

法定雇用率を著しく未達成の状況(行政指導基準)に該当する場合は、障がい者の雇入れ計画を作成すうことになり、ハローワークの雇用指導官による行政指導を受けることになります。

一度、雇入れ計画の作成の命令を受けると、計画期間の途中で雇用率を達成できても2年間は指導を受け続けることになるので、なるべく行政指導を避けたいところです。

なお、大阪ハートフル条例は上記に関わらず1名不足でも雇入れ計画の作成命令を受けることがあり、会社所在の地方自治体の条例も気にかけておくといいです。

ポイント②:差別禁止と合理的配慮の提供

これは2016年の法改正から義務化された内容ですが、その背景は2014年に日本が国連の障害者権利条約を批准したことにあります。

条約の批准により、障がいは個人の心身の機能の問題とする「医学モデル」の考え方から、障がいは社会が障壁を作ってしまっているから生じるものという「社会モデル」の考え方に切り替わりました。

例えば、建物に段差があるから下肢障がいの人が建物に入れないというようなことをいいます

差別禁止となる場面

障害者雇用促進法では、差別禁止に関する指針を出しています。

  • 募集及び採用均等な機会を与えないこと
  • 賃金配置昇進、降格、教育訓練、福利厚生、職種の変更、雇用形態の変更、退職の勧奨、定年、解雇雇用契約の更新について障害であることを理由として不当な差別的扱いをすること

上記について差別是正措置(ポジティブアクション)のために障がい者を有利に扱うことや、合理的配慮を提供した上で能力を適正に評価した結果、異なる扱いをすることについては法違反とならないとされています。

合理的配慮を提供する場面

合理的配慮についても厚生労働省から指針が出ており、障がい者と分かっている人すべてが対象となります。

合理的配慮の難しさは、障がいの内容や程度が一人ひとり違うところ。
例えば、聴覚障がい者だから手話通訳をつければいい、というような一律の対応ができないところです。(聴覚障がい者でも手話を知らない人はいます。)

基本姿勢は 対話 に尽きるよ

最低でも年1回は定期的に必要な配慮について確認していくことが求められています。

採用の場面においては本人からの申し出によるものとされていますが、障がいがあることが分かれば会社からも必要な配慮があるか確認した方が良いでしょう。

過重な負担という考え方

合理的配慮の提供義務で誤解されるのは、本人からの申し出をすべて受け入れないといけないと考えてしまうこと。
それは違っていて、指針では以下の例を挙げて「過重な負担」に該当する場合には義務から除くとしています。

  • 事業活動への影響の程度
  • 実現困難度
  • 費用・負担の程度
  • 企業の規模
  • 企業の財務状況
  • 公的支援の有無

例えば、聴覚障がいの方から手話通訳を手配してほしいと申し出を受けた時に、「お金がかかるから無理!」と突っぱねず、「上司やチームメンバーに話している内容をメモする形の情報保障とさせてほしい」など代替案を出します。

あるいは、下肢障がいの方から段差解消の申し出を受けた時に、「テナントビルだから無理!」と突っぱねず、「自社では決められないからビルオーナーに相談させて欲しい」など事情を説明します。

できない時こそ 理由を丁寧に説明しよう

私も何人も合理的配慮の申し出を受けましたが、できないものについては理由を丁寧に説明することである程度納得してもらいましたし、当事者の方も一緒に代替案を考えてくれました。

職場だけでは決断が難しいことがあるので、人事部門に相談窓口を設けるといいですよ

苦情の申し出先などの設置は努力義務としてありますが、設置しておくことをオススメします。

行政への報告

行政等に報告する障がい者の雇用状況は大きく2か所あります。
報告義務のある人数や集計方法が違うので要注意です。

【6~7月】従業員数が43.5人以上なら雇用状況を報告

従業員数が43.5人以上になったら、ハローワークに毎年6月1日時点の雇用状況を報告します。
該当するようになったらハローワークから障害者雇用状況申告書(複写式)が郵送で届きます。
(人数規模がギリギリの場合は届かないことも)

Excelデータがほしい場合は、ハローワーク飯田橋のHPに様式が掲載されているのでダウンロードして使うといいです。

公共入札をしている企業は早めに報告するといいよ

法定雇用率が達成されていた場合、公共入札で加点されることがあります。
障害者雇用状況報告書の提出期限は毎年7月15日までとされていますが、公共入札の締め切りは6月中のところもあるので、早めに報告しておくといいです。

【4~5月】従業員数が100人を超えたら雇用納付金の申告

障害者雇用促進法では、「全ての事業主は、社会連帯の理念に基づき、障害者に雇用の場を提供する共同の責務を有する」という考え方のもと障害者雇用納付金制度を導入しています。

その仕組みは、法定雇用率に未達の企業は1人当たり50,000円/月(納付金)を拠出し、達成している企業には超過1人当たり27,000円/月(調整金)を受給することで、障がい者雇用に伴う経済的負担を調整するというものです。

この納付金制度は、従業員数が100人を超えた企業に報告義務があります。
報告先は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(以下、機構)。

ハローワークへの報告と違い、雇用納付金の方は各月の雇用状況も出さないといけないので事務工数がかかります。

100人以下の企業でも実雇用率が4%または障がい者を6人を超えて雇用する企業は超過1人あたり21,000円/月が支給される「報奨金」の申請ができるよ

おわりに

障がい者雇用は義務の方に意識がいきがちですが、就業環境を整えることは障がい者以外の従業員にとっても働きやすい環境になります。

また、雇用した後に病気や事故などの理由から障害者手帳を取得することもあります。
その際に就業環境が整っていれば働き続けることもできます。

そういったポジティブな面も考慮しつつ、良い形で障がい者雇用を進めていきましょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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