テレワーク時の労務管理のポイントについて

05_労務・就業管理

こんにちは、みのりです。

コロナの影響でテレワークを導入する企業も出てきましたね。
国土交通省の調査によると、首都圏の普及率は27.6%で4人に一人がテレワークをしていることになります。

テレワークの時ってどうやって労務管理するんだろ?

テレワークは仕事なのか、プライベートなのか曖昧になりがち。
職場にいない分、業務なのか、そうでないのか判断が難しくなって、労務管理の難易度も上がります。

今回は、テレワーク(在宅勤務)時の労務管理のポイントについてまとめてみました。

テレワークの時は何を気をつければいいのか?

テレワークの労務管理については、厚生労働省から「テレワーク導入ための労務管理等Q&A集」が出ています。

ここで挙げられているのは以下の5点です

  • 労働条件の明示
  • 労働時間の把握
  • 業績評価や人事管理等の取扱い
  • 通信費・情報通信機器等の費用負担
  • 社内教育の取扱い

労働条件の明示

労働基準法では、就業場所は明示しないといけない内容(絶対的明示事項)としています。
テレワークを行う場合は、例えば「自宅および使用者の許可する場所」といった内容を明示します。

労働時間の把握

労働基準法では、会社に労働時間を管理することが求められていて、職場を離れていても労働時間管理の義務は変わりません。

始業時間、就業時間、残業時間など実働時間を把握するのは同じだよ

テレワークをする時も職場と同じ始業時間・終業時間としていれば時間管理は比較的ラクです。
ですが、テレワーク導入に伴いフレックスや裁量労働制など働く時間をフレキシブルにする制度を入れると、部下の労働実態(どの時間帯で働いているか?、サービス残業が発生していないか?、恒常的に長時間労働になっていないか?など)が分かりにくくなります。

業績評価や人事管理等の取扱い

テレワークにより、上司と部下が顔を合わせないことで業務の進捗など見えにくくなります。
業務日報や定期的な1on1(面談)を実施するなどして、目標の進捗や業務を進める上での困りごとなどを確認しコミュニケーションを厚くしていくと良いでしょう。

共有のスケジューラーを使っていれば何をするか、何をしたかを入れておくと仕事の見える化につながるよ

通信費・情報通信機器等の費用負担

業務をするためにPCの貸与をしている会社は多いかもしれませんが、スマホなどのモバイルは私用のものを使っていることがあるかもしれません。

電気代やモバイルの利用料は業務なのかプライベートなのか切り分けるのが難しいところです。
国税庁で「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」が発行されているので、こういった資料を見ながら実態に合わせて取り決めしていくと良いと思います。

通勤費の取扱いを縮小して、その原資をテレワークの費用補助に充ててる企業もあるね

なお、通信費などを従業員の負担にする場合は就業規則などの諸規程の改定が必要になるので要注意です。

社内教育の取扱い

テレワークになるとオンラインで独学で学ぶことも増えていきます。
コンテンツを閲覧する時間を勤務時間とするのか、しないのか、取り決めが必要になることもあります。

取扱い変更に伴う取り決めは別規程が良い

厚生労働省のQ&Aでは「就業規則」の改定と記載ありますが、実務的には就業規則には「別規程に定める」として、テレワーク用に規程を作った方がいいと思います。

就業規則の条文(数字)が変わったら、テレワーク以外の諸規程も変えないといけなくなる可能性があるので…

テレワーク(在宅勤務)でも安全衛生は求められる

働く人が健康でけがや事故が起こらないような職場環境づくりは労働安全衛生法によって会社に求められています。

作業環境に関すること

テレワーク時は自宅であっても「職場」ということで、厚生労働省にガイドがありました。

厚生労働省「自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備」より

300ルクス、500ルクスって言われても分からないや

というのが正直な感想…

調べてみると、300ルクスは「若干暗めのオフィス」ということで、8畳の部屋で30Wの蛍光灯を2本使った明るさのようです。
500ルクスはデパートの売り場位の明るさとのこと。

ディスプレイとの視距離は意外と近そうなので、40㎝以上離すというのを意識した方がいいかもしれませんね。
(プライベートでのスマホ利用も気をつけるところかも…)

健康管理に関すること

テレワークで裁量労働などのフレキシブルな勤務制度を入れていると、働く時間や場所に縛られなくて良い面もあります。

…が、一方で自分で強い意志をもって働く時間を決めないと、仕事とプライベートの切り替えが曖昧になって、深夜や土日も仕事をしてしまい長時間残業になってしまいます。
長時間残業は、本人の健康にも影響が及びますし、過重労働や休日などの労務リスクも生じます。

人によっては孤独を感じてメンタル不調をきたすことも考えないといけません。

テレワークでも健康診断の受診やストレスチェック、長時間残業者への産業医面談など対応できるようにしておきましょう。

テレワーク(在宅勤務)している時にケガをしたら?

自宅でテレワークをしている時に、

仕事中にトイレに行く途中、ドアにぶつかってケガしちゃった

仕事を中断してコンビニに行く途中で転んで捻挫しちゃったよ

ということがあったら、それは業務災害(以下、労災)になるのでしょうか?

最終的に労災かどうかの判断を下すのは労働基準監督署となりますが、人事担当者としては考え方を押さえておきたいところです。

ポイントは

業務起因性 があるか?

業務遂行性 があるか?

だよ

労災の判断基準

「業務起因性」とは、起こった事故の原因が業務にあったか?ということ。
「業務遂行性」とは、起こった事故が使用者の支配下・管理下にあったかどうか?ということで、テレワークで関わるところでは以下が当てはまります。

  • 作業中
  • トイレや水を飲むなど生理的行為による作業中断中
  • 作業の関連、付随行為中
  • 作業の準備、後始末、待機中

なので、仕事中にトイレに行く途中にケガをすると労災となる可能性があります

「業務遂行性」が認められても、

  • 労働者の積極的な私的、恣意的行為により発生した事故

の場合は「業務起因性」が認められないため、「仕事を中断してコンビニに行く途中にケガをした」というのは労災と認められない可能性が高いです。

テレワーク時に気をつけたいポイント

業務起因性があったか?、業務遂行性があったか?については、私的、恣意行為ではなかったと証明していく必要があります。

事故があったのが職場ではないので、会社が労災申請に協力したとしても、状況を証明するのはケガをした労働者本人になります。

んー、何を証明すればいいんだろ?

証明するポイントは、

  • 仕事の時間と私的な時間を切り分ける
    (プライベートと曖昧になるような「ながら仕事」はしない!)
  • 決められた場所で仕事をする
    (職場、自宅、会社が認めた場所で!)
  • 上司とのコミュニケーションをしっかりとる
    (始業時間、就業時間、中抜け、残業など連絡は密に!)
  • 自宅の作業環境は整えておく
    (自宅でも整理・整頓、清潔、清掃を!)

これらは事故が起こった時に取り繕うことができないので、日常からメリハリのある働き方をしていかないといけないですね。

おわりに

テレワークは新しい働き方として模索中の会社は多いと思います。

BCP(事業継続計画)として出社ができなくても事業を止めなくて良い、従業員が育児や介護などのプライベートな事情とやりくりがしやすくなるといったメリットがある一方で、ずっとテレワークでコミュニケーション不全に陥ってしまった、生産性が下がってしまったという話もあります。

テレワークはあくまでも働き方の選択肢の一つで、出社か在宅かの二項対立するものではないと思います。
うまく組み合わせて、会社にとって一番生産性が高まるように使えるといいですね。

参考URL

厚生労働省「テレワーク総合ポータルサイト
厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン
厚生労働省「テレワーク導入ための労務管理等Q&A集
厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて
厚生労働省「自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備
国税庁「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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