こんにちは、みのりです。
名古屋高裁で、本人の能力や経験が活かせない業務への配転は権利の濫用にあたるとして、配転無効の判決が確定したというニュースがありました。
「ジョブ型」映す、職歴尊重の判決 専門外への配転無効
(日経電子版 2021年5月4日より)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE2602E0W1A420C2000000/
今回の判決の特徴は、一般的な業務に対してもこれまでの経験や能力が保護されるということ。
これまでは、IT技術者や外科医など高度な専門技術者に限定されていたのが、キャリア保護の対象が拡大されたことになります。
今後、実務にどのような影響があるのか考えてみました。
配転(人事異動)のポイント
考えるにあたり、一旦、前提を整理すると、
会社が配転(人事異動)をできるのは、就業規則に「業務の必要に応じて配転を行う(人事異動を行う)」と明記して、それを根拠にするからです。
とはいえ、配転、特に転居を伴う配転(転勤)は従業員やご家族の生活に大きな影響を及ぼすものなので、会社が何でも好き勝手にできるというものではありません。

最高裁判例により、以下に該当する場合は配転が無効になると解されます。
- 業務上の必要性がない場合
- 不当な動機・目的をもってなされた場合
- 従業員に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものである場合
- 職種・勤務場所限定の合意がある場合
(東亜ペイント事件 最高裁判決1986年7月14日)
今回の判決は、「従業員に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものである場合」がポイントになりました。
実務面で気をつけたいポイント
今回の判決を見て気になったのは以下の2点でした。
- 採用時の説明と合意
- ジョブ型雇用と配転
採用時の説明と合意
判決では認めていませんでしたが、ご本人は

採用時に職種を限定する合意があった
と主張していました。
おそらく面接の会話の中でスレ違いがあったのだと思います。
面接者が現場の仕事を十分していないとか、応募者の不安を和らげようとして「大丈夫」なんて言ってしまうとか、誰にでも起こりうることです。
これについて対策するとしたら
- 求人票に職種や勤務地に関して「配転あり」を明記する
- 面接中に募集条件を確認する(求人票を読み合わせする)
など、入社する前の採用選考の段階で説明と合意を取っておくことが大事です。
ジョブ型雇用と配転
日本の雇用慣行はメンバーシップ型なので、仕事で成果が出なかった時に簡単に解雇はできません。
「あなたの仕事はないです」は通用しなくて、指導を重ねて、最低でも2回は配転して別の業務を経験させるということを、実務上、対応してきました。
それが、今回の判例は専門外への配転が無効。
最近のジョブ型雇用を意識した結果と言われていますが、本人の雇用継続という点で考えると、本人不利になってしまうように思います。
特に、職種を限定してキャリアアップさせていくタイプの会社については、別職種への配転をする際は、一方的な内示と発令ではなく、事前に事情を伝えて本人から内諾を得るというステップが必要になってくるかもしれません。
おわりに
今回の判例は対象が拡大したとはいえ、内容は最高裁判例の配転無効のケースを意識したものでした。
- 業務上の必要性がない場合
- 不当な動機・目的をもってなされた場合
- 従業員に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものである場合
- 職種・勤務場所限定の合意がある場合
ジョブ型雇用を取り入れていく会社は、併せて配転させる場合の手続きの見直しも必要になりそうです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!
人事・総務関係のブログランキング (^-^) / ♪